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さらなるイノベーションの鍵は技術と文化のシェアリング

APIエコノミーが秘める可能性(対談)

クラウドが社会のインフラとして定着し、モバイル・デバイスが多くの消費者の手に行き渡ったことにより、ビジネスに求められる多様性やスピードはかつてないレベルへ引き上げられました。このデジタル・トランスフォーメーションに適応するために、企業が打つべき次の一手とは何なのでしょうか。日本IBMのクラウド テクニカル・セールス統括部 エグゼクティブ・アーキテクトの早川ゆきと、クラウド事業本部 アドバイザリーITスペシャリストである宇藤岬が、現代のビジネスが抱える課題と進むべき未来をテーマに語りました。

早川 ゆき×宇藤 岬

早川 ゆき
日本アイ・ビー・エム株式会社
クラウド テクニカル・セールス統括部
エグゼテクティブ・アーキテクト
宇藤 岬
日本アイ・ビー・エム株式会社
クラウド事業本部
クラウド・テクニカル・サービス
アドバイザリーITスペシャリスト

クラウドの浸透と市場やユーザーの変化

クラウド環境では、わずかな投資でスピーディーに チャレンジできるため、尖ったユーザーが増えています (宇藤)
クラウド環境では、わずかな投資でスピーディーに チャレンジできるため、尖ったユーザーが増えています (宇藤)
【宇藤】草創期のクラウドは、コストダウンや運用負荷の軽減を導入メリットとして検討されるケースが多かったですが、その傾向が変わってきています。今日では、新たなチャレンジやビジネスの成長に欠かせないものがクラウドだと認識されるようになったと感じますが、いかがですか。

【早川】まったく同感です。私は、その要因の1つはモバイルの急速な普及にあると考えています。今は、モバイル・デバイスで消費者が書き込むコメントで、ブランドイメージが傷ついたり、商品の売れ行きが左右されたりする時代になったので、企業は、どうすれば消費者のモバイル体験を楽しいものにできるのか考えざるを得なくなりました。ユーザーが付ける星の数が減れば、すぐ原因を究明し、翌週には修正版をリリースすることが求められています。このスピードで開発を続けるには、クラウド以外の選択肢はないといっても過言ではありません。

【宇藤】日本でも、新規事業の立ち上げや、従来型ビジネスのトランスフォーメーションを検討するデジタル・イノベーション推進部のような組織を設ける企業が増えてきました。そういう部門の方と話すと、皆さんクラウド・ファーストで設計を考えていると感じます。しかし、今でもコアな部分のクラウド化に関しては、強いアレルギー反応を示す人がいることは事実です。

【早川】日本では金融機関を中心にクラウドへデータを置くことへの拒否反応が今でもあると思います。しかし、先ほどお話ししたようにモバイルの普及が急速なので、これからは変わらざるを得ないと思います。例えば、この2、3年口座アグリゲーションや家計簿のアプリが何百万もダウンロードされ、その影響で金融機関のサーバーへのアクセスが急増しています。このままだと本業へ影響が出る恐れがあるので、これらのアプリに安全にデータを提供する仕組みを素早く作るためにもクラウドの利用は必須です。クラウドのセキュリティーは、弊社をはじめITベンダーが最先端の対策を講じており、不安を感じるような状況はなくなっています。私はいつもお客様には「出せるデータからどんどんクラウドで公開し、モバイル顧客体験を魅力的にして、新規顧客の獲得や顧客満足度向上を目指してください」とお話しするようにしています。

クラウド時代の進展に伴うIBMユーザーの変化

【宇藤】わずかな初期投資でスピード感を持ってさまざまなチャレンジを繰り返せるクラウド環境が整ったことにより、IBMのユーザーにもスタートアップをはじめ小規模な企業が増えてきたと感じます。APIエコノミーが整備された今は「このAPIだけは誰にも負けない」とか、「このサービスは競争力がある」とか、特化した領域で勝負できる環境があるので、尖ったユーザーが多くなってきた気がしますが、いかがですか。

【早川】先日「APIカフェ」というイベントを開催した時も、これまで弊社の営業がコンタクトできていなかったお客様がたくさん参加されました。そういう方々は「クラウドでスモール・スタートしてビジネスが伸びたらスケールアウトすればいい」と割り切っていて意思決定が非常に早いですね。一方、クラシックなお客様もトップの方は「クラウド時代のスピードに対応しなければならない」という危機感を持っていますが、組織全体にその危機感が行き渡っていない感じがあります。ただし、トップから支持を受けた現場の方々は、その具現化に向けてクラウドをどう活用するか真剣に検討していますね。

【宇藤】やはり、これまで要件定義をしてから進めるウォーターフォール型のプロジェクトが中心の企業と、アジャイル型のアプローチを実践できている企業とでは、経験と実績で大きな距離感が生まれてしまっていますね。

【早川】そこは、開発手法の問題ではなく、組織の文化を変えなければ解決しないと思います。

【宇藤】私がDevOpsを提案した会社もアジャイルだと納期も工数も読めないので予算が組めないという話になり、結局、承認プロセスや予算の取り方という文化の部分を変えて例外的に対応することになりました。
今はオープンな時代。アイデアを独占せず、 シェアリング・エコノミーの発想でビジネスが展開されています (早川)
今はオープンな時代。アイデアを独占せず、 シェアリング・エコノミーの発想でビジネスが展開されています (早川)

モバイルの可能性と課題

【宇藤】情報収集から商品購入までモバイルだけで完結するユーザーが急激に増えてきており、今まで以上にモバイルの重要性が高まってきました。モバイルでサービスを提供する場合、インターフェースのデザインや操作性が悪いと、ユーザーは簡単に離脱してしまうので、今まで以上にユーザー・エクスペリエンスのつくり込みが重要になったと思いますが、早川さんはどう見ていますか。

【早川】これからは、ユーザーが手にするデバイスはモバイルだという前提でビジネスを設計しても良いと思います。「モバイルに対応するべきかどうか」と悩むだけ時間がもったいないですよ。

【宇藤】ブラウザー・ベースよりモバイルのほうが直感的に扱えるものが多いですし、高齢化社会でも、どんどん普及率は高まるでしょうね。

【早川】今はクラウドに公開されているミドルウェアの部品やパートナー企業が提供するサービスを利用し、APIを組み合わせて開発する方法が一般化しつつあります。テストもリリースも自動化を支援する仕組みがあるので、APIでこれらをつなげばバージョンアップのスピードを速めることができます。先ほど、アプリもどんどんバージョンアップしなければ淘汰されてしまうと話しましたが、それに対応するテクノロジーと仕組みは、すでに用意されているのです。

APIエコノミーが世界を変える

【宇藤】いわゆるAPIエコノミーが急速に普及し、開発の在り方が根本から変わってきましたね。

【早川】APIエコノミーの良いところは、1つの業界に閉じないところです。例えば、銀行さんがモバイルで何かサービスを提供しようと考えたとき、銀行口座の残高照会や振り込みができるサービスを考えると思うのですが、それはどこの銀行さんも考えるので、そこで終わってしまうと“ディスラプター(既存の仕組みを破壊し新たなビジネスを創出する存在)”にはなれません。これは金融機関に限りませんが、改革のヒントは常に別の業界にあります。APIを活用して、他業界のサービスを自分たちのサービスと安全につなぎ、これまでにない新しい発想のサービスをモバイルで提供する、これが“ディスラプター”になる近道です。このようなお話をすると、未来の話だと勘違いされる方がいますが、すでにその環境は整っています。実際にIBMはBluemixを提供し、今すぐにAPIを活用できる環境を提供しています。しかし、まだこの環境が十分に利用されているとはいえません。

【宇藤】企業の方には、新たな販売チャンネルとしてBluemixにAPIを公開してほしいとお願いしています。私は、いつもお客様に「世界に広がるクラウドの自動販売機に自分たちの商品を載せてみませんか」とお話ししています。

【早川】日本でも、APIを活用して新たなサービスを提供する企業さんが出てきました。デジタルポストさんという会社は、ネットから手紙を送れるサービスを提供していて、例えばスマホで撮った写真をハガキにして投函してくれるアプリもあります。これなら海外から使っても国内で投函されるので2、3日で家族の元へ届きます。デジタルポストさんは、その仕組みをAPIで公開していて、そのAPIを年賀状印刷のソフトウェア会社さんや名刺をネットで管理する会社さんが使いはじめ、どんどんビジネスパートナーが広がっています。

クラウドとオンプレミスのハイブリッドが現実的な選択肢

【宇藤】クラウドであれ、オンプレミスであれ、処理内容に応じた最適な実行環境を選択してほしいというのが、IBMの基本的なスタンスです。ただ、オンプレミスからクラウド、クラウドからオンプレミスへの移行、あるいはハイブリッドでの活用には、互換性やデータの連携性など意識せずシームレスに移行および連携できる環境が欠かせません。IBMは、そこを容易にするテクノロジーを提供しているので、そこをもっと活用してほしいですね。

【早川】これからは膨大なコードを書くのではなく、Webサービスよりさらに小さなマイクロサービスを疎結合することで、業務を完結できるようになります。では、そのすべてをクラウドで実現するのかというと、必ずしもそうではなくオンプレミスも使いながら、ピーク性のある部分だけクラウドで自動的にスケールアウトして対応するやり方もあるわけです。これからのクラウドは、ハイブリッドへ向かっていくので、業務アプリの開発方法やデザインの発想も、それに合わせて変えていく必要がありますね。

テクノロジーの進化が組織の変化を導く

【宇藤】マイクロサービスとAPIで業務を遂行できるようになれば、ビジネス部門だけでもプロトタイプを作ったり、IT部門がビジネスディベロップメントのフェーズから参画したりと、これまでの役割やスコープに変化が生まれてきますね。

【早川】IBMのお客様企業にはデザイン・シンキングというワークショップを開催しているところもありますが、そこには企業の役員から現場の営業担当者、IT部員、新人まで年齢も職位も異なる方がたくさん参加されました。このワークショップは、Bluemixに公開されている部品を使ってモバイルアプリを作ることが目的でしたが、約4週間で完成しました。従来の感覚からすると、驚異的な開発スピードですよね。では、なぜそれほど速く開発できたのかというと、APIで部品を組み合わせてつくっているからなんですね。ただ、今回おもしろかったのは、参加した皆さんがアプリを完成した喜びより、「普段話すことのない人たちと職位や部門を超えて、とことんユーザー目線でつくりあげたことが楽しかった」とおっしゃっていることです。私は、そこに何か文化を変えるヒントがあるのではないかと思っています。クラウドやモバイルの進化は、文化を変えるチャンスにもなると思っています。

IBMのオープン化がもたらす価値

【早川】System of Engagement(SoE)が広がりはじめた頃から感じていたのですが、最近はアプリの世界にもシェアリング・エコノミーの考えが反映されるようになってきました。例えば、FXアプリで稼いだ人が、自分のポートフォリオを公開し、仲間たちがそのポジションをコピーして売買するソーシャル・トレーディングが流行ったりしています。自分だけで儲けようとせずに「みんなを儲けさせるために自分の手を教えたい」と考えるそうです。アイデアもテクノロジーも1人で囲わず、それを公開してみんなが幸せになれば、結果的に自分のところもうまくいく、そういうサイクルが生まれつつあります。IBMも完全にオープンになってシェアリング・エコノミーの発想でビジネスを展開していますよね。

【宇藤】最先端を追求する従来型の開発サイクルも継続しながら、IBMの時間軸とは異なる開発サイクルで進化するオープンソースをきちんと取り入れて、それをベースに開発を進めることで、ある意味、抜け漏れがないよう門戸を広げたという言い方もできますね。

【早川】IBMはシンプルにテクノロジーが大好きな会社だと私は思っています。テクノロジーが大好きで、だからお客様にも最先端の価値を楽しんでもらいたいんです。テクノロジーの進化を推し進めるためにIBMがオープン化をリードするというのも当然の発想なのだと思います。

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